
鼻筋ヒアルロン酸注入とは?
「鼻筋ヒアルロン酸注入」は、メスを使わずに鼻を高くできる美容施術として人気を集めています。
この施術は、ヒアルロン酸という体内にもともと存在する成分を鼻筋に注入することで、自然な高さと立体感を作り出す方法です。ダウンタイムがほとんどなく、施術時間も15~30分程度と短いため、「プチ整形」として多くの方に選ばれています。
しかし、手軽さゆえに安易に施術を受けてしまい、後悔するケースも少なくありません。実際に、鼻筋が太くなりすぎたり、不自然な仕上がりになったり、さらには血流障害による重篤な合併症が起こる可能性もあります。
この記事では、鼻筋ヒアルロン酸注入で後悔しないために知っておくべき6つのポイントを、形成外科医の視点から詳しく解説します。
ポイント①:繰り返し注入による鼻筋の太さ変化を理解する
ヒアルロン酸注入で最も多い後悔の一つが、「鼻筋が太くなってしまった」というものです。
ヒアルロン酸はジェル状の製剤であるため、注入後は少しずつ体内に馴染んでいきます。多くの方は、この馴染みによって高さが減ってきたと感じると、「もう少し高くしたい」と追加注入を希望されます。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。ヒアルロン酸は完全に吸収されるわけではなく、一部が残存することがあるのです。そのため、繰り返し注入を続けると、徐々に鼻筋が横に広がり、太くなってしまう可能性があります。
初回注入の効果持続期間は約半年程度ですが、3~4回の注入を重ねると長期間持続するようになります。ただし、医師の適切な判断なしに追加注入を繰り返すと、不自然な太さになってしまうリスクが高まります。
この変化は少しずつ起こるため、本人が気づかないケースが多いのが特徴です。周囲から指摘されて初めて気づく方も少なくありません。
ポイント②:注入部位と注入量の適切性を確認する
鼻を高くする際、鼻の付け根(鼻根部)だけに集中的に注入してしまう医師が多いのが現状です。
しかし、美しい鼻筋を作るためには、鼻根から鼻先にかけての「理想値」を理解し、足りない部分を適切に補充することが重要です。鼻根部だけを高くしても、バランスが悪くなり、不自然な仕上がりになってしまいます。
理想的な鼻の高さには、前額と鼻根、鼻先と鼻根の高低差のバランスが関係しています。このバランスを無視して注入すると、横顔のシルエットが不自然になったり、正面から見たときに鼻筋が太く見えたりします。
また、注入する層(深さ)も重要です。適切な深さに注入しないと、ヒアルロン酸が左右に流れてしまったり、しこりができたりする原因になります。
経験豊富な医師であれば、患者様の顔全体のバランスを見て、どの部位にどれだけの量を注入すべきかを正確に判断できます。
ポイント③:血流障害などの重篤なリスクを知る
ヒアルロン酸注入は「プチ整形」として手軽に受けられる施術ですが、実は重篤なリスクも存在します。
最も深刻なリスクが「血管塞栓症」です。これは、ヒアルロン酸が誤って血管内に入り込み、血流を阻害してしまう状態を指します。鼻周辺には眼動脈につながる血管が存在するため、血流が止まると組織の壊死や、最悪の場合は失明につながる可能性があります。
実際に日本でも、鼻根部へのヒアルロン酸注入後に眼動脈閉塞を起こし、視力を失った症例が報告されています。この症例では、注射直後から視力障害、頭痛、気分不快、両腕の麻痺などの症状が現れましたが、ヒアルロニダーゼ(溶解注射)や高圧酸素療法などの処置を行っても、視力は回復しませんでした。
眼動脈塞栓を起こすと、1~2時間で失明に至るとも言われており、即座に応急処置が必要です。施術中に強い痛みや違和感を感じたら、すぐに医師に伝えることが重要です。
大規模な調査では、ヒアルロン酸注入290,307件のうち、重篤な合併症の発生率は0.0041%と非常に低いものの、ゼロではありません。特に鼻根部や法令線の小鼻付近は、失明や皮膚壊死につながるリスクの高い部位として知られています。
こうしたリスクを考慮し、鼻根部へのヒアルロン酸注入を行わないクリニックも増えています。施術を受ける前に、医師からリスクについて十分な説明を受けることが不可欠です。
ポイント④:経験豊富な医師とクリニックを選ぶ
ヒアルロン酸注入の成功は、医師の技術と経験に大きく左右されます。
形成外科専門医の資格を持つ医師は、顔面の解剖学的構造を深く理解しており、血管の走行や神経の位置を把握した上で施術を行います。これにより、血管塞栓などの重篤な合併症のリスクを最小限に抑えることができます。
医師選びの際には、以下のポイントを確認しましょう:
- 形成外科専門医の資格を持っているか
- 鼻のヒアルロン酸注入の症例数が豊富か
- カウンセリングで患者の希望を真摯に聴く姿勢があるか
- リスクや合併症について丁寧に説明してくれるか
- 患者の要望に対して、適応の可否を正直に伝えてくれるか
また、クリニック選びも重要です。カウンセラーだけの説明で施術を決めるのではなく、必ず医師による直接のカウンセリングを受けましょう。医師が患者様の顔全体のバランスを診て、適切な施術計画を立ててくれるクリニックを選ぶことが大切です。
「骨切り」のスペシャリストとして豊富な経験を持つ医師であれば、ヒアルロン酸注入だけでなく、より根本的な解決方法についてもアドバイスしてくれるでしょう。
ポイント⑤:カウンセリングで希望を明確に伝える
施術の失敗を防ぐためには、患者様自身の準備も重要です。
カウンセリング前に、自分がどのような鼻になりたいのか、イメージを明確にしておきましょう。言葉だけでは医師に正確に伝わらないこともあるため、理想の鼻の写真やイラストを用意すると効果的です。
ただし、注意が必要なのは、言葉で発する内容と持参した画像の内容が一致しているかという点です。「少しだけ鼻を高くしたい」と言いながら、ホリが深く見えるほどの高い鼻の画像を見せると、医師が混乱してしまいます。
カウンセリングでは、以下の点を明確に伝えましょう:
- どの部分をどれくらい変えたいのか
- どのような印象になりたいのか
- 日常生活で周囲に気づかれたくないかどうか
- 過去のヒアルロン酸注入歴や他の美容施術歴
- 持病やアレルギーの有無
また、医師の説明をしっかり聞き、疑問点があれば遠慮せずに質問することも大切です。納得できるまでカウンセリングを受け、不安が残る場合は施術を延期する勇気も必要です。
ポイント⑥:術後のケアと定期的なメンテナンスを理解する
ヒアルロン酸注入は施術後のケアも重要です。
施術直後は、軽度の腫れや内出血が生じる可能性があります。これらは通常3~7日程度で治まりますが、重要な予定がある場合は、その直前の施術は避けた方が良いでしょう。
また、施術後に以下のような症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください:
- 強い痛みや激しい頭痛
- 視力の変化や目の異常
- 皮膚の色の変化(白くなる、紫色になるなど)
- 感覚の麻痺や異常
ヒアルロン酸の効果は永続的ではありません。個人差はありますが、効果の持続期間は約6ヶ月から1年程度です。理想的な状態を維持するためには、定期的なメンテナンスが必要になります。
ただし、前述したように、追加注入を繰り返すと鼻筋が太くなるリスクがあります。そのため、医師が追加注入の必要性をしっかり見極め、適切なタイミングと量を判断してくれるクリニックを選ぶことが重要です。
また、ヒアルロン酸注入を続けるのではなく、より根本的な解決方法として「輪郭骨切り整形」や鼻の骨切り手術を検討することも一つの選択肢です。これらの施術は半永久的な効果が期待でき、長期的に見ればコストパフォーマンスも高くなります。
まとめ:後悔しない鼻筋ヒアルロン酸注入のために
鼻筋ヒアルロン酸注入は、適切に行えば自然で美しい鼻筋を手に入れられる優れた施術です。
しかし、手軽さゆえに安易に受けてしまうと、後悔につながる可能性もあります。この記事で紹介した6つのポイントを押さえることで、失敗のリスクを大幅に減らすことができます。
最も重要なのは、経験豊富な医師を選び、十分なカウンセリングを受けることです。形成外科医として15年以上の経験を持ち、「骨切り」のスペシャリストとして豊富な症例数を誇る医師であれば、患者様一人ひとりの理想を実現するための最適な施術計画を提案してくれるでしょう。
鼻筋ヒアルロン酸注入を検討されている方は、まずは信頼できるクリニックでカウンセリングを受けることから始めてみてください。あなたの「理想」を「現実」に変えるための第一歩です。
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著者
志藤 宏計(KIMI CLINIC 院長/形成外科・頭蓋顎顔面外科専門医)
2007年新潟大学卒業後、慶應義塾大学形成外科にて専門研修を開始。顔面外傷・小児奇形・乳房再建などの形成外科診療のほか、美容外科では骨切り術、鼻整形、加齢性変化への外科的アプローチを多数経験。
イギリス・オックスフォード大学やバーミンガム小児病院での海外研修も含め、国内外で最新の医療技術を習得。形成外科的な正確さと審美的な感性を融合し、KIMI CLINICで質の高い医療を実現している。
資格・所属学会
日本形成外科学会 認定専門医
日本頭蓋顎顔面外科学会 認定専門医
日本形成外科学会 小児形成外科分野 指導医
日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
日本マイクロサージャリー学会 会員
日本オンコプラスティックサージャリー学会 会員
日本口蓋裂学会 会員




