
鼻整形後の日常生活は本当に制限されるのか?
鼻整形を考えている方の多くが抱く不安…それは「手術後の生活がどう変わるのか」という疑問です。
結論から申し上げますと、ダウンタイム期間が終わって落ち着けば、日常生活においてできなくなることはほとんどありません。ただし、手術直後の回復期間中は一時的にいくつかの制限があり、長期的にも注意が必要な点がいくつか存在します。
形成外科医として15年以上の経験を持つ私が、鼻整形後の生活について、本当に制限されることと誤解されがちなことを明確に解説していきます。患者様からよく質問される内容を踏まえ、実際の臨床経験に基づいた正確な情報をお届けします。
鼻整形の基本と施術方法による違い
代表的な鼻整形の方法と特徴
鼻整形には様々な方法があり、それぞれダウンタイムや制限事項が異なります。主な施術方法を見ていきましょう。
1. ヒアルロン酸注入
手軽で即効性がある方法です。持続期間は1〜2年程度で、徐々に自然に吸収されていきます。修正や元に戻すことが比較的容易なため、初めての方にも選ばれやすい施術です。
2. プロテーゼ挿入
シリコンなどの人工物を使用して鼻筋を通す方法です。半永久的な効果が得られ、自然な仕上がりを実現できます。ただし、異物を挿入するため稀にプロテーゼがずれたり、L型が入っている場合には飛び出すリスクがあります。
3. 軟骨移植
耳介軟骨や肋軟骨を使用して鼻を形成する方法です。自家組織を使用するため体になじみやすく、自然な仕上がりになります。複雑な形状の修正にも対応できる高度な技術です。
施術方法別のダウンタイム期間
施術方法によってダウンタイムは大きく異なります。
**オープン法**は鼻柱に切開を行う施術で、ダウンタイムは一般的に2〜4週間程度です。施術後1週間程度はギプス固定が必要で、抜糸は約1週間後に行われます。腫れのピークは術後2〜3日で、その後徐々に落ち着いていきますが、自然な状態に近づくまでには3〜6ヶ月程度要することがあります。
**クローズ法**は鼻の内側からアプローチする施術方法で、外見上の傷跡が残りにくいのが特徴です。ダウンタイム期間は1〜3週間程度とされています。
**ヒアルロン酸注入**は切開を伴わないため、ダウンタイムは非常に短く、数日から1週間程度で日常生活に戻れます。
術後の一般的な経過とダウンタイム中の症状
ダウンタイム中に起こる主な症状
鼻整形後のダウンタイム中には、いくつかの症状が現れる可能性があります。
【出血】施術から48時間程度は鼻から出血することがあります。強く鼻をかむことは避け、ティッシュで軽く押さえる程度にとどめてください。
【腫れ】腫れは約1〜2週間程度です。内出血や感染が起こった場合は、腫れが長引くこともあります。腫れのピークは術後2〜3日で、その後徐々に落ち着いていきます。
【内出血】個人差はありますが、鼻周囲、頬、まれに眼窩周囲が紫色〜赤黒色になります。徐々に黄色くなり、約2週間程度でひいていきます。
【傷跡】傷跡の赤みは数か月かけて徐々に目立たなくなります。完全に消えることはありませんが、3〜6か月は傷跡が硬くなり、徐々に硬さは改善されます。
【ギプス】鼻のギプスは約5〜7日間、耳のガーゼは数日〜1週間程度装着します。状況により日数の違いがあります。
回復までの一般的な流れ
一般的に鼻整形は、施術直後〜3日ほどは腫れ・痛みが強く出やすい時期です。
約1週間後に抜糸を行うケースが多く、この頃から腫れは徐々に引きはじめます。2週間〜1か月で大きな腫れは落ち着き、最終的な形が安定するのは3〜6か月かけて少しずつ、という流れです。この期間は個人差があり、施術方法によっても異なります。
術直後のダウンタイム中に気をつけること
洗顔・シャンプー・お化粧について
翌日より可能ですが、ギプス固定部は避けてください。
術後5日目にギプスが取れます。その後は洗顔してもいいですが、強くこすると傷の治りが遅くなる可能性があります。そのため、泡立てた洗顔フォームで優しく洗顔をしましょう。メイクについても、テープ等の固定が取れるまでは控えめに。その後も刺激の少ないものから始めることをおすすめします。
シャワー・入浴の制限
シャワーは翌日より可能、ギプス固定除去後は全身可能です。
入浴(湯船)は1週間後の抜糸後より可能です。すぐに入浴できないのは、入浴することで血行がよくなると出血しやすくなり腫れが出やすくなるためです。温まることで血流が促進され、せっかく止まった出血が再開したり、腫れが悪化したりする可能性があります。
飲酒・運動の制限期間
入浴と同様、飲酒や運動も血行がよくなり出血、腫れの原因となるため、1週間は控えてもらっています。
特に激しい運動は血圧を上昇させ、傷口に負担をかけます。軽いウォーキング程度であれば数日後から可能ですが、ジョギングやジムでのトレーニングなどは最低でも1週間、できれば2週間程度は控えることをおすすめします。
喫煙が傷の治りに与える影響
タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮する作用があるため、傷の修復に必要な酸素や栄養素の運搬を妨げてしまうことから、喫煙をしていると傷の治りが遅くなってしまうとされています。
術後1ヵ月は禁煙した方が傷のためにもいいです。どうしても難しい場合でも、最低2週間は我慢していただくことを強くおすすめします。
鼻をかむことと寝る時の姿勢
術後2週間程度は鼻の中の粘膜が手術の影響で浮腫むので、鼻水が出たりくしゃみが出やすくなったりします。
鼻をかむ際は強く押さえすぎず、ティッシュやタオルで軽く拭き取るようにしましょう。強くかむと傷に負担がかかり、治りが悪くなるためです。寝る時の姿勢については、術後2週間は手術部位や傷跡が不安定な状態です。うつ伏せで寝ると、鼻に負担がかかってしまう可能性があるので、注意していただく必要があります。
また、心臓よりお鼻を高くすることで、血液が集まるのを防いで、むくみや腫れを抑えることができるので、枕を高くするといいでしょう。
本当にできなくなることと誤解されがちなこと
長期的に制限されること
鼻整形後、完全にできなくなってしまうことはほとんどありません。
しかし、長期的に注意が必要なことがいくつかあります。**鼻の骨が折れる可能性のある激しいスポーツ(ラグビーやサッカー、格闘技等)**については、慎重になる必要があります。プロテーゼや軟骨移植を行った場合、強い衝撃により形が変わってしまう可能性があるためです。
また、肋軟骨を使った鼻中隔延長とL型プロテーゼの場合は鼻先がかなり硬くなる**ため、鼻先を指で押し上げても豚鼻が作れなくなります。これは施術の性質上避けられない変化です。
誤解されがちな「できなくなること」
多くの方が心配される「眼鏡の使用」ですが、これは一時的な制限です。
プロテーゼを入れた場合、1ヶ月程度は着用を控える必要がありますが、その後は問題なく使用できます。コンタクトレンズは術後すぐから使用可能です。また、「表情が硬くなる」という心配もよく聞かれますが、鼻の形が変わることで顔の印象が変わり、一時的に表情が硬くなることがありますが、これは時間とともに自然になっていきます。
「鼻をかめなくなる」という誤解もありますが、術後2週間程度は強く鼻をかむことを避ける必要があるものの、その後は通常通り鼻をかむことができます。
日常生活で実際に問題ないこと
ダウンタイムが落ち着けば、以下のことは問題なく行えます。
通勤や通学は、腫れが落ち着けば問題ありません。マスクを着用することで、周囲の目を気にせず過ごせます。軽い運動も、2週間程度経過すれば徐々に再開できます。ウォーキングやヨガなど、鼻に衝撃を与えない運動から始めましょう。
メイクも、ギプス除去後は通常通り行えます。ただし、最初は優しく行い、強くこすらないよう注意してください。食事については、特に制限はありません。辛いものや熱いものも、傷が落ち着けば問題なく食べられます。
鼻整形後の他の美容医療について
併用可能な美容施術のタイミング
鼻整形後、他の美容医療を受けたいと考える方も多いでしょう。
脱毛、レーザートーニング、ダーマペンについては、肌に赤みがないぐらい落ち着いていれば可能です。赤み(炎症)がある状態で刺激を加えると色素沈着の可能性が高くなるため、肌の赤みが落ち着いてから施術を受けることをおすすめします。赤みのある部位を避けて照射する分には問題ありません。
しみとり、ほくろ取りレーザーについては、レーザー後に保護のためのシールを貼るので、鼻の施術前にしておくのがおすすめです。ギプス固定部位としみ・ほくろの部位が重なると取りたいしみ・ほくろが取れないためです。ギプス固定除去後はいつでも可能です。
ゼオスキンなどのスキンケア
ゼオスキンについては、傷が生傷じゃなければ問題ありません。
ハイドロキノンは傷跡の色素沈着予防にも有効です。むしろ、術後の傷跡ケアとして積極的に使用することをおすすめする場合もあります。ただし、使用開始のタイミングについては、担当医に確認することが大切です。
まとめ|鼻整形後の生活は思っているより制限が少ない
鼻整形後の生活について、多くの誤解があることがお分かりいただけたでしょうか。
ダウンタイム期間が終わって落ち着いていれば、日常生活においてできなくなることはほとんどありません。一時的な制限として、入浴や飲酒、激しい運動など血行が良くなることは控える必要がありますが、これは傷の治りを良くするための一時的な措置です。
長期的に注意が必要なのは、鼻の骨が折れる可能性のある激しいスポーツ程度です。通常の日常生活、仕事、軽い運動、メイク、食事などは問題なく行えます。大切なのは、術後の経過をしっかりと観察し、担当医の指示に従うことです。
KIMI CLINICでは、形成外科医として15年以上の経験を持つ志藤院長が、患者様一人ひとりの状態に合わせた丁寧なアフターケアを提供しています。鼻整形に関する不安や疑問がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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著者
志藤 宏計(KIMI CLINIC 院長/形成外科・頭蓋顎顔面外科専門医)
2007年新潟大学卒業後、慶應義塾大学形成外科にて専門研修を開始。顔面外傷・小児奇形・乳房再建などの形成外科診療のほか、美容外科では骨切り術、鼻整形、加齢性変化への外科的アプローチを多数経験。
イギリス・オックスフォード大学やバーミンガム小児病院での海外研修も含め、国内外で最新の医療技術を習得。形成外科的な正確さと審美的な感性を融合し、KIMI CLINICで質の高い医療を実現している。
資格・所属学会
日本形成外科学会 認定専門医
日本頭蓋顎顔面外科学会 認定専門医
日本形成外科学会 小児形成外科分野 指導医
日本美容外科学会(JSAPS) 正会員
日本マイクロサージャリー学会 会員
日本オンコプラスティックサージャリー学会 会員
日本口蓋裂学会 会員




